頑張り屋な彼女と紳士の皮を被った狼
1.彼女と紳士な狼の始まり
★2人のそもそもの始まりは……★


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「市川、頼む!」

終業間近の午後5時、同期の鈴木が言ってきた。

両手を拝むように合わせて、頭を下げる角度は45度。


「これ、明日取引先に提出しないといけないんだけど、俺これから接待なんだよ。
 頼む! やってくれねえ……?」


ちらりと、やつが持ってきた資料を見ると過去のデータやらの数字が載っている。

ようは、取引先への説明資料を作れということらしい。


「……これ、何時間くらいかかりそうなの?」

「え、えっと、お前ならきっと3時間くらいで……」

「……いつから必要なのわかってたの?」

「一昨日の時点ではわかってました……」

「……」

「いや、ほら、昨日今日のうちに空いた時間でできるかな~って思ってたんだけどさ、いろいろ忙しくて時間取れなくて。あははははー、なんて……」


鈴木は空笑を浮かべる。

それを聞いて、私は大きく大きーく息を吸った。


「わかってたなら、なんでもっと早く持ってこないのーーー!!!」

「ひー! す、すみません!!」

「あんた、今何時だと思ってるの! 残業決定じゃない!
 だいたい、いつもあんたはぎりぎりまで仕事ためすぎなのよ。いつも言ってるでしょうが!」

「ご、ごめん。反省してます! だから頼む~~、同期のよしみでなんとか!」


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