なんでも屋 神…第一幕
第十章
日本に戻ってから初めて安らかに、癒されるように深く眠った。



「神く〜ん…何時まで寝てんの〜…この!」



一葉の声で眠りの淵から歩き出そうとしてしていると、息苦しさで一気に駆け出して目が覚めた。



「…お前殺す気か!鼻を押さえてチュ〜すんな!」



咳込んだ後、深く大きく息を吸って呼吸を整える。窓の外を見ると、俺の見える限りの世界を夕日が赤く染めていた。



「…嘘。俺そんなに寝たの?」



寝ぼけながらも真顔で訪ねる俺に、悪戯な笑みを携えて怒ったフリをする一葉。



「そうだよ。私なんか、家に一回帰ってお風呂入って着替えてきたんだから…って言っても、さっきまで神君と一緒に寝てたけどね。」


文句を言いながらも幸せそうな顔の一葉を見ると、俺まで嬉しくなってくる。



携帯を開くと、ノリと兄ぃからの着信が二件。幸せな世界から、現実に引き戻される時間はあっけない。
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