強がりも全部受け止めて
『・・・、・・・さん、笹岡さん?』




「きゃっ!」



トントン、と肩を叩かれて体が跳ねるほど驚き、悲鳴まであげてしまった。




そんな私の声に態度に、同じようにビクつき目を見開いたのは。




「ご、ごめんね!ビックリさせちゃったわよね。大丈夫?」




『大丈夫です!私こそ驚かせちゃったみたいでごめんなさい』




まだ膨らんでいないお腹に視線を移して問いかければ、慌てたように返事をする亜希ちゃんだった。




「あの、ヤカンのお湯、少し頂いてもいいですか?」




『え、ええ。どうぞ』




シュンシュンと音を立てて湯気を出す火にかけられたヤカン。湯気の量からいって、随分前に沸騰しているのは明らかだった。




給湯室は狭くてガスコンロは一つしかない。そのコンロのまん前で、ボーっと私が立っていたんだから、さぞかし邪魔だったことだろう。




「ごめんなさい、考え事してて。ヤカン、熱くなってるから噴き零れたら危ないわ。
亜希ちゃん、何が飲みたいの?いま用意してあげる」




『すみません、じゃあこのティーポットにお湯入れてください』



渡された耐熱ガラスのティーポット。それにこぼれないようにゆっくりとお湯を注ぐと、
途端に真っ赤な色が容器内に広がった。







< 28 / 87 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop