雨音色
プロローグ


「・・・何で・・・?何でここに・・・」


聞こえるのは、降り続く雨音と、互いの声。


傘もささずに、二人はそこにいた。


「・・・どうしてかな。


自分でもよく、分からない。


ただ、今行かなければ、駄目だと思ったんだ」


暗闇の中、うっすらと見えるのは互いの顔。


いつもなら道を照らしてくれる月さえも、黒い雲で、その姿を隠す。


「そして、これだけは伝えたかった」


「・・・?」


暫く、彼らの間に沈黙が漂う。


雨は止む事を知らないかのように、佇む二人に、激しく打ちつける。


「・・・心が泣くんだ。君に会えないと」


雨が一層強くなっていく。


「・・・私も・・・」


暖かい雨の音色が、二人の体を包んでいった。


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