赤の疾風
参
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「…………梳菜……。」
萬天の呟きといえば、ほとんどその「梳菜」の二文字だけだった。
刻はもう昼に差し掛かっている。
予想では、このくらいには来る頃かと思ったが、一向に梳菜は現れない。
「……もしや…、いや、まさか……。
……だが……しかし……。」
刻が過ぎれば過ぎるほど、嫌な予感ばかりが浮かんでくる。
来ないのでは?
約束を忘れてしまった?
自分に、会いたくなくなったのでは?
そんな考えばかりが。