恋時雨~恋、ときどき、涙~

熱帯夜

「今度は、キャンプ場で、バーベキューするんけ。真央も来いよ」


ごみごみした窮屈な道で、健ちゃんがわたしに言った。


「もちろん、静奈ちゃんも一緒に」


わたしが頷くと、「よし」と健ちゃんはわたしの頭をひとつ叩いた。


先頭を亘さんと汐莉さんが寄り添いながら歩いていて、その数メートル後ろをわたしと健ちゃんが歩いていた。


健ちゃんは何かを言って、わたしはそれを読み取り頷いたり首を振ったりしながら。


わたしたちから少し離れた後方には、順也と静奈がいた。


わたしは健ちゃんとの話に夢中で、順也と静奈がこじれていた事に気付きもしなかった。



美岬海岸から離れて大通りに出ると、さすがに人もまばらになった。


花火大会帰りの人たちが数人歩いているくらいだ。


国道も空いていて、車が軽快に加速して飛ばして行った。


狭い歩道を歩いている時、わたしは縁石に躓いてよろけてしまった。


健ちゃんの唇を読み取りながら歩いていたので、前や足元をしっかり見ていなかったからだ。





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