恋時雨~恋、ときどき、涙~

ライオンとうさぎ

夏の青空は、濃い色をしている。


海の青を映したような、深い水色だ。


朝から大きな入道雲がもこもこ沸き上がっていた。


8月も終わりに近いのに、まるで初夏のような木漏れ日が、キッチンに射し込んでいる。


わたしは、朝早くから慌ただしくしていた。


お弁当を作っていたのだ。


短大で専攻しているのは栄養学。


週に3日は調理実習をしているから、料理は得意だ。


紫色のシソを混ぜたものと、濃い緑色のわかめを混ぜた、三角おむすび。


卵焼きは少しお砂糖を入れて、甘口にした。


唐揚げ、カニさんウインナー、ミートボール。


かいわれ大根を生ハムで巻いたものと、プチトマトも添えた。


お弁当箱に詰めていると、寝癖頭と腫れぼったい目を擦りながら、パジャマ姿のお父さんが起きてきた。


〈おはよう〉


わたしが手話をすると、お父さんは眼鏡をかけてにっこり微笑んだ。


そして、賑やかなキッチンを見て目を丸くした。


「今日、どこかに行くのか? ピクニック?」





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