Symphony V

Repeat

「そういえば、レオンは先輩のお父さんのこと、知ってる?」

レオンのしかめっ面をみて、唯は内心、しまった、と後悔した。

「なんであんな奴のこと聞くんだ?」

レオンの言葉がひっかかった。

「あんな奴って…どういう意味?」

唯が聞き返すと、レオンは頭をふる。

「…あいつは、稜夜のことを、いつも道具のように扱ってた」

レオンの言葉の意味がわからず、首を傾げた。

「俺のところの親はあんなだけど、悪いことをすればちゃんと怒って、何かをうまくできたとや、人助けしたときには褒めてくれて、何かあれば守ってくれた。人として、ちゃんと扱い、接してくれた」

ちらっとキアリーの方を見る。優しく微笑みながら、ヒラヒラと手をふってきた。唯も笑って手をふりかえす。

「だけど稜夜の父親は違ってた。あいつが何をしても興味なさそうに知らん顔で、悪いことをしても、いいことをしても。何も言わなかった。ただ、自分に必要な時だけあいつを呼んで、用事をいいつけてやらせていた。そんな奴だった」

レオンの言葉に、唯は悲しくなった。


私の両親は、確かに血の繋がりはなかったけど。だけど、私のことを大切に育ててくれてたと思う。感謝してもしきれないくらい、大事にしてくれてたって思う。


「稜夜先輩は…お父さんのこと、どう思ってたのかな」

唯が呟くと、レオンはため息をついた。

「…それでも、あいつにとっては大切な家族だった。だから、一生懸命父親の役にたてるようになりたいって、ガンバってたよ」

レオンの言葉に、唯は胸が苦しくなった。


「…あの時までは」

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