もしも、もしも、ね。
*3*
***
順調にいくかと思われたコスプレ喫茶。
問題が発生したのは、文化祭前日になってのことだった。
教室に実際の装飾を施しだした、その日。
「こんな所にいれねぇよ!!」
「今更そんなこと言ったってどうしようもないでしょ!!」
ある意味予想通り。
ピンクとキラキラとハートにまみれた教室を見るや否や、文句を言い出す男子達。
というわけで、勃発しました。
男子(一部)vs女子(一部)
やっぱ無難に黄色とか緑とか、そういうのにすればよかったのに。
なんて思うけど口にはしない。
低い声が地面を這い、高い声がキンキンと頭に響く最悪の環境の中、
私はと言えば黙々と望果と一緒に風船を壁に貼り付けてる。
喧嘩が始まって数分。
思ったより長いどころかヒートアップしてる喧嘩に、私は一応望果に話題を振った。
「望果、いいの?委員長がそんなんで。」
「あたしの責任じゃないしー。」
「いや、そういう問題じゃなくってさ・・・。」
「だって、あたし火に入る夏の虫にはなりたくないもーん。」
「望果ちゃん、今は秋の虫だよ。」
「あ、ともちゃん上手い!座布団一枚!!」
楽観的だなぁ、望果は。
ケラケラとともちゃんと笑い合ってる。
「なんで“夏”の虫なのか知ってるー?」という由来を語り出すなっちもきっと二人と同類。
私だって別に興味はないし、楽観的にもなりたいところだけど。
正直この騒ぎの中じゃ落ち着かない。
私は大きく息を付いて、ロッカーの上という高い位置から彼らを見下ろした。
「つーか誰だよ、これ買ってきた女子!!」
「荒川だろ?泣いてんじゃねーよ。」