グリンダムの王族

婚約者との出会い

ファラント御一行がグリンダム王城に到着したのは日暮れ少し前だった。

丁寧に出迎えられ、早速王子と宰相は、王と王妹の待つ広間へと通される。

セシルは身支度を終えて、ラルフの隣の椅子に座っていた。
普段と違い綺麗に髪を結い上げ、上等なドレスに身を包んだ妹は、ラルフの目から見ても別人のように美しく見えた。

着飾ることに興味のない妹のそういった姿を見ることは滅多にない。黙って眺めていると、そのうち視線を気にして「なによ」と返してきた。

―――口を開いたら台無しだ。

ラルフは黙って目を逸らすと、苦笑した。

やがて広間に、従者を伴いファラントの王子が姿を現した。
落ち着き無く、辺りを見回しながら歩いてくる。
そしてその目をラルフに向けて止めた。王子の綺麗なライトブラウンの瞳が自分を見ている。

―――まだ幼いな、、、。

それが王子の第一印象だった。

ラルフは玉座から立ち上がると、王子の側へ歩み寄った。

「遠方より長旅お疲れでしょう。夜には晩餐会を開く予定ですが、それまではどうぞおくつろぎください」

ラルフの言葉に王子の隣に居る男が、「ありがとうございます」と頭を下げて応えた。

ふと王子の視線がラルフを通り越し、セシルに向かった。その目は驚いたように見開かれている。ラルフは妹を振り返り、「セシル、こちらへ」と声をかけた。

セシルはゆっくり立ち上がり、ゆっくりラルフ達のもとへと歩いてきた。

そんな動作はいつも男のような格好で剣を振り回している姫には見えない。
今日は久し振りのドレスなので、歩き方に苦労しているようだった。
ラルフはこっそり苦笑しつつ、妹を迎えた。そしてクリス王子と宰相に紹介する。

「こちらが私の妹、セシルです。よろしくお願いいたします」
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