丸腰デパート・イケメン保安課
業務3 主任のヒミツ

御手洗さん

「……暑い…」


8月です、夏本番です。

猛暑です。

保安課勤務3ヶ月、出勤途中。


朝8時30分。デパート裏、社員通用口のドアに手をかける。

あれ?

ドアから5メートル向こう…誰かが道にうづくまってる?


何だろ?猛暑で具合悪くなった人かな?

「あの…どうかされました?」

私は、うづくまる小さな背中に声をかけた。具合悪い人だったら大変だよね。

「具合悪くなりました?」
「いえ…ワタクシ、体調は絶好調でございますよ。おじょうさん」

やけに丁寧な口調。
笑顔で顔を上げたのは、70歳くらいの男性だ。

黒いスーツに黒いマント、頭には黒のシルクハット…右手にはステッキ。
まるで、本に出て来るイギリス紳士みたいなおじぃさん。

「誓って、絶好調でございます」
「…あぁ…そうなんですか」

初対面で誓いを立てられても…。

それにその服…猛暑ですよ?似合ってますけど暑くないですか?

いや、それより疑問なのは…。

「なぜこんな所に座っていらっしゃるんですか?」
「なぜ?なぜワタクシがこのような路地裏に座っているのか…とお聞きになりますか?なぜワタクシがと?」

…何で言葉かみ砕いてんの?
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