未来のない優しさ




しばらくぶりの妹からの電話に出た瞬間から、いい話じゃないだろうとは予想がついていた。
夜家に来いと強い口調で言われて、とりあえず了解したけれど。

きっと柚の事だろう…。

事務所で仕事を進めていてもなかなか集中できない。
妹も違う事務所で弁護士をやっているせいか、口では敵わない。

これまで柚を絶対的に守ろうと支えてきた妹の美晴は、あの事故以来俺に対しても柚の敵のようにしか接する事がなくなった。

事故の後すぐ、騒ぐマスコミから身を隠して治療するために、俺とも一切連絡を絶った柚と美晴が事故後もずっと繋がっていたと知ったのは二年前。


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