未来のない優しさ
涙と大切な人




合鍵を持っている事を私が知って以来、当たり前のようにその鍵を使って私の部屋に入ってくる健吾。

ほとんど同居のように私の側で生活している健吾に、最初は

『自分の部屋に戻ったら?』

と言っていたけれど、そんな言葉は全く無視されて。

今では

「晩御飯何が食べたい?」

と聞いてしまうようになった…。

「オムライス」

とためらいもなく、私の作ったご飯を食べる事が当たり前のように答える
横顔を見つめると、心の中が優しい想いでいっぱいになる。

こんなやりとり、私の人生には訪れないって思ってたから…。

本当は叶えたい。

でも叶わない夢の中にいるようで。

この部屋を出るまであと半月。

健吾の側で笑いながら、世話をやきながら。

毎晩抱かれる喜びに浸っても…いいよね。
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