プラチナの誘惑




「…で、飛び出してきたって?」

「そう。逃げちゃった…」

俯く私と、呆れて天井を見上げる日和…。
揃って小さくため息をついた。

はあ…。

私は後悔のため息。

日和は呆れたため息。

仕事を持ち帰った日和が図面のチェックをしているリビング。

日和の背後に小さく座って恐縮しっぱなし…。
普段からしょっちゅう来ているこの部屋だけど、こんなに居心地の悪い思いをするのは初めて。

この1時間、昴の部屋からやって来た私の話を淡々と聞いてくれた日和だけど、落ち込む私を慰めてくれるどころか

「…悲劇のヒロインなんて、そうそうなれるもんじゃないんだからね」

図面から目を離すことなく、低い声で突き放されてしまった…。
思いもよらなかった言葉に、最初は聞き間違いじゃないかと焦ったけれど

「せめて、昴が部屋に戻るまでいなきゃだめだったね」

続く駄目押しの言葉が、聞き間違いじゃなかったと…。

ニヤリと笑う目を向けられながら、ようやく理解できた。
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