依存~愛しいキミの手~

期待

「ってことは、出会い記念に乾杯っすね(笑)」


「あ!それちょーいい!」


裕也の案に美香がはしゃぐ。


「じゃあ、あすかとの出会いに乾杯ー」


優がグラスを目線の高さまで持ち上げ、八重歯をのぞかせながら言った。


「イェーイ、かんぱーい!」


他の3人もグラスを手に取り、カチンといい音を鳴らすので、私も真似してグラスを軽くぶつける。


少しすると、裕也指名のお客さんが入ってきたので、裕也が席を外した。


「初めてのホストクラブはどう?」


圭介が背もたれの上に腕を置き、体ごと私の方を向いて言った。


「すごく緊張!まだ緊張してるよ」


私が言うと圭介が優しく笑いながら


「俺と優いるから少しは気が楽とかねぇの?」


と、言った。


「う~ん…。2人とも私服の時と全然違うから、それもまた緊張の原因の1つ(笑)」


笑いながら言い、ビールを飲み干した。


置いたグラスに圭介が手を添えて、氷を入れた後少し傾けながらビールをついでいく。


「接客ってマナーとかルールみたいなのあるの?」


私が聞くと圭介はタバコを取り出した。


「タバコ吸ってもいい?」


と、指先に挟んだタバコを見せながら言った。


話聞いてないのかよ…。


「どーぞ」


私がぶっきらぼうに答えると笑いながら火をつけ、一口吸った後に圭介が色々教えてくれた。


「今みたいに、タバコ吸うのも一言断ったり、…ほらこれ。」


三角に畳まれたお絞りを持ち上げる。


「お絞りは三角に折って折り目をこっちに向けて端に置く。灰皿は1本吸ったら交換。グラスに焼酎注ぐ時は、こうやって客にラベルが見えるように持って、注ぐ所に指添える。乾杯する時は両手で、客のグラスより下。…他にも色々ありすぎるよ(笑)」


そう目を細めて笑いながら、タバコの灰を灰皿に落とした。
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