ハルジオン。

(四)

(四)


「あった!」

大きな歓声で我に還った達也は、靖之の無邪気でお人好しな性格に、この時ばかりはほんの少しだけ感謝した。

「どれ?」

さも興味があるような体で膝丈ほどの穴を覗き込む。

気がつけば、手のひらがびっしょりと汗で濡れていた。

達也がその手をズボンで拭っていると、背中に百合子の視線を感じた。

なんだよ。
と口の中で呟く。

達也には、百合子が今どんな表情でこちらを見ているのかが容易に想像できた。

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