花の魔女
第二章
冬の始まり
「……ベル!ナーベル!!」
誰かが自分の名を呼ぶ声に、ナーベルははっとして目を開けた。
目の前には、悲痛な表情で自分を覗き込むジェイクの姿があった。
ナーベルは飛び起きてジェイクにしがみついた。
「ジェイク、どうしよう!ラディアンが、ラディアンが…!」
動転して泣き叫ぶナーベルの体に、ジェイクは片膝をついたまま腕をまわした。
「ごめん、ナーベル」
ジェイクは仮面男達が侵入してきたとき、あわててフィオーレの寝ている部屋から出ようとしたが、ドアに魔法がかけられていて出ることができず、助けに行けなかった。
「奴ら、前からラディアンを狙ってたんだ。恐らく、俺の力が弱まるのを見計らって……」
悔しそうに唇を噛むジェイクに、ナーベルは顔を上げた。
その顔には、訝しげな色が浮かんでいる。
しまった、と思ったジェイクは急いでナーベルから離れようとしたが、遅かった。
ナーベルがしっかりとジェイクの胸元を掴んでいたのだ。
「どういうこと?詳しく説明して」