モテ男と地味子の初恋物語

紬side

桂木君の後から保健室に入ると、校医の先生はいなかった。

私が「諦めて帰りましょう?」と言うと、桂木君は「構うもんか」と言い、私を丸椅子に座らせた。

目の前に桂木君のバッグがドサッと置かれ、私は子猫が気になったので、そっとファスナーを開けた。

子猫は震えながら「ミー」と鳴いていた。きっとお腹が空いてるんだなあ。可哀相に…

それにしても、私や桂木君を引っ掻くなんて、ちょっと気が強い猫なのかしら?

「君、可愛い顔してずいぶん乱暴ね?」

と子猫に言ったら、「仕方ないんだよ」と桂木君に言われた。

「子猫ってさ、まだ爪を引っ込めるのが下手なんだ」
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