溺愛プリンス

王子と図書館で



「志穂ッ、志穂ってば! 外、大変なコトになってるよ?」



次の日。
講義を受けるために訪れた教室の窓際。
そのいちばん後ろの席に俯いて座っていたあたしに、心配そうに近づいてきたのは……




「……茜」




力なくそうつぶやくと、茜は悲しそうにその瞳を揺らした。




「それにしても……すっごい人だね。 志穂さ、いったい何したの?」

「……なにもしてないよ。 だから関わりたくなかったのに」

「え?どういう事?」



キョトンとするのは、親友の片桐茜(かたぎりあかね)。
切りそろえられた前髪が、彼女の大きなたれ目を強調していた。




ザワザワとする教室にチラリと視線をめぐらせて、そっと溜息をついた。





「ねぇねぇ、あの子? 昨日ハロルド様に話しかけられてたのって」

「嘘! あんな地味な子に話しかけるはずないよ」

「だよね、じゃあ、どの子?」





昨日の一件以来。
噂は瞬く間に広がっていた。






< 7 / 317 >

この作品をシェア

pagetop