溺愛プリンス

王子の笑顔の裏側




よく晴れた昼下がり。

春の日差しが差し込むテラスで、甘いココアを口に運んだ。



……ゴクン



「あつ!」



うー……
舌べらやけどしたぁ……。



「大丈夫?」



と、その時心配したように声をかけられ、オズオズと顔を上げた。

丸いテーブルの向かい側にはなぜかあの王子様の姿。
あたしの顔を覗き込むように、瑠璃色の瞳が見つめていた。






「……は、はい。あの……平気です」





何とかそう答えると、あたしはまた俯く。




……なんで?
なんで『王子様』があたしなんかとお茶してるの!!?


全然意味わかんないんだけど!



それにしても……。
最近ヒロ兄の姿が見当たらない。

今日こそは文句を言ってやろうかと思ってたのに。

まさか逃げてんじゃないでしょーね?


絶対捕まえてやるんだからっ。





ゴクン



まだ熱いココアを一口飲んで、小さく息を吐いた。



姿を現さない敵を探すより、まずは目の前。

……よね。





「あの」




意を決して、高級そうなティーカップに入ってる紅茶を味わってる王子に声をかけた。



あたしの声にこたえるように、王子の伏し目がちの瞳があたしを捕えた。




……ドキン




瑠璃色の瞳に戸惑って、一瞬頭真っ白になったけど。
あたしはもう一度、深呼吸をした。



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