あひるの仔に天使の羽根を

・耐性 :煌Side

 煌Side
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俺は膨大な荷物を部屋に投げ入れると、思い切りベッドにダイブした。


たかが船なのに、ダブルの大きさで個室って何だよ。


それともここは、2人用か?


そう思った時、芹霞の言葉を思い出して、俺はまた赤くなった。


相手が櫂というのが何とも複雑だけど、確かに俺はあの言葉に煽られ……俺は芹霞と深く唇を重ねた、あの夢見心地の瞬間を思い出した。


自然と俺の指先は、俺の唇を触れ、芹霞の幻影を追い求める。


2ヶ月間、消えることの無かった熱い…蕩ける様なあの感触。


いつもの俺のヘタレ具合では、こんな直ぐには行き着かなかった夢のような急展開。


あの思い出が強烈すぎて、俺は香水女を抱くことが出来なくなっちまった。


なんていうか……全然気持ちよくなんねえんだ。


逆に、肌に触れられれば萎えてきて。


思い返すのは芹霞のことばかり。


だから余計イライラは募るし、ようやく芹霞と2人になれると思ったら、我慢解禁日直前に緋狭姉の横槍。また集団行動かよ。


別に、芹霞にやましいことをしようとか……ま、まあ俺も男だ、ほんの少しはどうにかなりてえって思ってたけどよ、だけど何よりも、俺は元気な芹霞がいつも通り神崎家に帰ることを、そしていつも通り俺もその景色に染まることを、本当に心待ちにしていたんだ。


俺の日常を回復させたかった。


2ヶ月前は俺にとって……特に芹霞に関しては衝撃的だったから。


それによって何かが終焉を迎えねえよう、ない頭絞って考えてみたけれど、やはりない頭は何もなく。


思い返すのは陽斗(ハルト)。


――ぎゃははははは。


俺のオリジナルの金の男。


あいつの心はよく判る。


俺だけしかできねえこと、惚れた女にしてやりてえもんな。


俺の痕跡、残してえ。


忘れられねえくらいに刻み込みてえ。


それは"男"による支配欲だろうけど、だけど少なくとも、安っぽい橙色の…誰よりも劣った馬鹿な俺としては、少しでも芹霞の心に居座りたくて、今だって必死なんだ。


酷えよ、俺の周り。


あの櫂とあの玲…。


双璧だ――。


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