花の魔女
街へ
アナベラはどうやらラディアンの身に起こったことを察知し、サイラスを館を置いたまま一人でこの村にやってきたようだった。
ナーベルたちに出会ったのは、まさに森に行こうとしていたところだった。
「それでね、ナーベルさん」
ナイジェルがこねていた生地を丸めるのを手伝いながら、アナベラがナーベルに視線を送った。
アナベラの丸めた生地は少し歪な形をしている。
「ラディアンが連れ去られてしまった今、あなたをこのまま森に置いておくわけにはいかないわ。シャミナードらあなたに目をつけているはずだもの」
確かにそうだ。
今回は何もされずに済んだものの、シャミナードにとってナーベルは邪魔者であるはずだ。
いつ襲ってきてもおかしくはないだろう。
フィオーレは申し訳なさそうに俯いている。
「そうですわね。今は冬の真っ只中でございますし、わたくしたちもナーベル様を守りきれるという自信がございませんわ」
アナベラはそんなフィオーレにいえいえ、と首を振った。
「別にあなた方を信用していないわけではないのよ。ただね、念のために。どう?私たちの館にいらっしゃいませんこと?」