プリンセスの条件
*お姫様の幸福
【4年後】
「マイ、超キレイ!!」
「へへ。ミサト、来てくれて本当にありがとう!!」
「やっと本当の夢が叶うんだ?」
「うん」
「まだ早いだろ!って思うけど、マイはもう限界だもんね。よく4年も耐えたよ。一時はどうなるかと不安だったけど」
呆れ顔で笑うミサト。
あたしも苦笑いを返すことしかできなかった。
ミサトの言う“一時”は、きっとあの日。
翔太に初めてプロポーズされた21歳の誕生日。
あの時のあたしは、現実なんてまったく見えてなくて。
翔太の言うことなんかまったく耳に入らなくて。
プロポーズされた翌日、実家に戻って両親に『翔太と今すぐ結婚する!』と言ってしまい、6時間も茶室で正座させられたまま説教をされた。
『もっと現実を見ろ!』とか、『翔太くんの言うことを聞け!』とか。
それでも一歩もひかないあたしに、両親がある条件を出した。
『そんなに言うならやってみなさい。今すぐアルバイトをして生活費を稼ぎなさい。これからは一切の仕送りをやめる。
結婚というのは、親からきちんと自立した大人がすることだ。夢だけでできる簡単なことじゃない。翔太くんはそれがよく分かっている。
マイ、それでも今すぐ結婚したいと言うなら、生活費も自分で稼いで、立派に自立して、大学だって今より成績を落とさずにちゃんと卒業すること。
もしそれができたら、大学の卒業式が終わって、すぐ結婚することを認めよう』
その日からあたしは、生まれて初めてのアルバイトを始めた。
近所のケーキ屋で、大学が終わって閉店の21時まで毎日働いた。
だけど、毎日4時間程度働いたところで、とても1ヶ月の生活費にはならず、ミサトに紹介してもらって、バイトの掛け持ちを始めた。
ケーキ屋が終わって、夜の22時から深夜3時くらいまでは、大学近くの居酒屋で。