愛しいわがまま。




遥を置いて先に学校へ着いた私は、特にどーするわけでもなく。

私の様子を心配する愛那の隣で、ただぼーっとしていた。




すると、



「あ、凌ちゃん…」


愛那が私の向こう側を見つめて呟いた。


「ん?」

愛那の視線をたどってみる私。



…と、そこには。
少し息をきらした様子の遥が、私たちの教室をのぞいていた。



「……あー、うん」


私は遥と目が合ってしまう前に、愛那の方に向きなおす。


「…本当にどーしたの?ケンカしてるの?」


私のおかしな反応を見て愛那は心配そうに尋ねる。


「凌っ!」



遂に私を見つけた遥が私を呼んだ。

それを心配そうに見る愛那に


「…大丈夫だよ」


なるべく笑顔でそう伝えてから、私は教室の扉のそばにいる遥に近づいた。



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