花日記

*星空


宴が終わり、一人、部屋の縁側で月を眺めながら何をするでもなく寝転んでいた。



ひんやりとした夜風が体を撫でて、心地好い。



「…誰だ。」



人の気配がする。



将軍という立場上、幾度となく暗殺されかけたから人の気配にはかなり敏感に反応出来てしまう。



「──夕凪でございます。」



振り返ると、水干ではなく桜色をした女物の着物に身を包んだ夕凪がいた。



体を起こし、夕凪をじっと見る。



「畠山に遣わされたか?」



「え…」



「当たりか?」



「…はい。」



あのジジイがかなりニヤついてやがったから、こうなることは予想してたが。



「近くへ。」



ま、せっかくのジジイのご厚意なんだから、甘えておかねえと。



恐る恐る近くに来た夕凪の肩を、そっと抱き寄せる。



夕凪は一瞬、ビクッと反応し恥ずかしそうに顔を伏せた。


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