龍とわたしと裏庭で②【夏休み編】

「圭吾とケンカでもした?」

夕食の後で彩名さんにきかれた。

「えっ? してませんよ。わたし、何かツンケンしてました?」

「いいえ。ただ、圭吾がとても緊張していたようだから」


緊張? そうなの?

気付かなかった

でもどうして?


「心当たりはなくて? 志鶴ちゃんに嫌われないか気にしているように見えたのだけれど」


あっ! 今朝の事気にしてる?

嫌だから手を離してって言っちゃったし


「誤解してるかも。あー、どうしていつも失敗しちゃうんだろ」

「誤解なら解いてらっしゃい。
『どこか遊びに連れて行って』っておねだりするといいわよ。
あの子、喜ぶから」

「そんなんでいいんですか?」

「いいのよ。志鶴ちゃんが喜ぶ顔を見るのが好きなんだから」


わたしと圭吾さんの絆はとても脆いと思う瞬間。

彩名さんはちゃんと圭吾さんのこと見てるのに、わたしは何も見えていない。


「二十年以上あの子の姉をやってるのよ。分かって当然。でもね志鶴ちゃん、あの子の心をなだめたり喜ばせたりすることは、あなたにしかできないの」


本当?

わたしは圭吾さんを幸せにできる?

ああ、もう!

くよくよ考えちゃダメ!


「彩名さん」

「何かしら?」

「ありがとう。いつもありがとう」

「どういたしまして。行ってあの子を安心させてあげて」
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