Dear my Dr.

帰国

予定していた半年の留学も終わり。

悠ちゃんは、収穫も大きかった様子。

「また忙しい毎日が始まるのかぁ…」

そうやって感傷に浸りながら、長旅の末に降り立つ空港は懐かしい匂いがした。




茅島家の実家に挨拶に行けば、何も変わらない、お義父さんとお義母さん。

変わったことといえば、その食卓に浩哉くんがいる、ということ。

「悠哉にも話そうと思ってたんだけど、将来は浩哉に病院を任せようと思う」

お義父さんが、しっかりとした口調で悠ちゃんに向かって言った。

「…それでいいと思うよ」

「浩哉も、いいな?」

「どうせ昔から決まってたことだろ」

浩哉くんの、すこし投げやりな言い方に、なんとなく鳴海さんを思い出した。

のどがつかえたみたいで変。

そんな私を横目で見て、悠ちゃんがトントンと私の背中を叩く。

そのサインは、ただムセそうな私に対してのトントンなのか、

それとも“余計なことは言うなよ”のトントンなのか…。

わかってるよ。

私がどうこう言うような立場でもないし、言ったからどうってこともない。

「4月からは友哉も研修医で帰ってくるし、お前達も面倒見てやれよ」

「友哉くん、帰ってくるんですね?」

“友哉くん”というのは、茅島3兄弟の末っ子。

つかみどころのない、自由な人っていうイメージがある。

「脳外科と神経内科の研修はウチだが、そのほかの科は伊崎先生のところでお願いしてあるんだよ」

「そうなんですか?」

「提携病院だからね」

お義父さんの“提携病院”という言葉に、重みを感じてしまった。

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