AZZURRO
第三章 神官と闇

帰国

オリポスを出国したクリスら一行は
ゆっくりとカイルに帰路をとる


兵士と思われないように
皆商人の姿をしていたが
ユキノとクリスだけはその目立つ容姿から
マントを頭からすっぽりかぶっていた


「あの、ジャンさん?」

雪乃の馬と並走するジャンに
雪乃は遠慮がちに声をかける

ジャンは手綱を握る手はそのままに
顔だけを雪乃に向けた


「なにか?」


「あの…今回はすごくジャンさんが頑張ってくれたと
クリス様から聞きました。
本当にありがとうございました。」


オリポスにいる間も
クリスの抜けてしまった公務の調整や
その他の配備などで忙しく動き回っていたジャンに

改めてゆっくりお礼を言えなかった事を
ユキノはずっと悩んでいた


「いえ。
全てはクリス様の為。
ユキノ様が気にするようなことではありません。
それよりも、勝手に
ブレイクの宮を抜け出そうと考えていたなんて…

御身を大切にとあれだけご注意申し上げましたのに。」


とげのある言い方に雪乃は首を垂れる

「…すみません。」

謝ったのに…怒られてしまった…

肩を落としている雪乃を見て
フッとジャンは頬を緩めた


「しかしながら
ご無事でのご帰還…本当に嬉しく思っております。」


「え?」

聞き慣れないジャンの優しい言葉に
雪乃は顔を上げる
しかし
次に瞬間には
ジャンの顔はいつものように
威厳に満ちたものに変わっていた
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