嘘婚―ウソコン―

*朱い鳥のバラード

その日の夜、千広はバイトが終わるとある場所を訪ねた。

「まさか、もう1回くることになるなんてな」

呟いて、ネオンの看板を見あげた。

クラブ『Cinderella』――前に陽平に連れられて、一緒にきたキャバクラである。

もう2度とこないとばかり思ってたのに、またきていた。

しかも、今度は1人である。

千広は金色のドアノブに手をかけると、ドアを開いた。

ひょこっと中を確認するように顔を出したら、
「あら、女の子のお客さんなんて珍しいわね」

誰かが声をかけてきたものだからビックリした。

目の前に視線を向けると、その当人がいた。

見あげるくらいの長身に、肩までのパーマがかかったくすんだ金髪が特徴的な美人だった。
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