Dear my Dr.

沈黙

何事もなかったように時は過ぎる。

私も知らないふりをする。

ただ、心にシコリは残ったまま。




今日は伊崎総合病院に来ていた。

ひさしぶりに来たけれど、なんだか繁盛している様子。

スタッフの人数も増えたみたい。

「次の方どうぞー、79番の方」

中待合もズラリと患者さんが並んでいるから、きっとあの人は怒るだろうな…。

そう予想した通り。

さっきまでの呼び出しは看護師さんの高い声だったのに、急に不機嫌な声がした。

「…どうされましたぁ?」

現れたのは、お医者さんっぽいお兄ちゃん。

「何なの?マジで。キミのお兄さん、暇じゃないんすけど…」

「だからちゃんと診察券通して順番待ってたじゃん」

「そういう問題じゃないぞ」

「それにね、ホントに患者なの」

「あっそう」

ポリポリと頭をかきながら、私を診察室に通す。

そういうところ、結局優しいくせに、素直じゃないんだから。

「で、今日はどうされました?」

「お薬出してほしいなーって」

「なんの?」

「喘息。ちょっと調子悪くなりそうな気配がするから」

明らかに面倒くさそうな顔。

まぁ、そうでしょうね。

「あのねぇ、お客さん。ここは循環器科。呼吸器科にまわってくれる?看護師さーん!コイツ3診にまわしてくださーい!」

「わぁぁ、ちょっと待ってよ!」

「だから、なに?…ってか、薬くらい悠哉くんに出してもらえばいいじゃん」

「……」

「夫婦喧嘩?」

ドキッとする。
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