ショコラ~恋なんてあり得ない~

9 恋の罠



「あーお腹一杯!」


お店に居たのは三十分くらいかしら。
ラーメン店って、何だか長居できる雰囲気が無い。

店を出たあたしたちは何となくブラブラとしながら駅に向かって歩いていた。

温かいものを食べたからだけでなく、あたしの心はホカホカで。

宗司さんの前を歩いたり、立ち止まって先に歩かせて、その背中を眺めてみたり。
素面なのに酔っ払いみたいに浮かれていた。

宗司さんはその動きは特に気にしてなさそうに微笑を浮かべて、あたしにはよくわかんない星座のあれこれを教えてくれた。


「何でも知ってるのね」

「こういうの覚えるのは好きなんだよねぇ」

「勉強好きだから先生になりたいの?」

「うーん。どうだろう。知るのは楽しいってのを教えたいのかもしれない」


宗司さんは迷うことも多いけど、多分色々考えている。
考え続けて出した答えは、彼自身の中できちんと固まっているのかもしれない。

だから、時々迷いもなくスッと返ってくる答えは、妙によどみなく、自信ありげにさえ見える。


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