ただ今、政略結婚中!

突然の縁談

私の小さい頃からの夢は、愛する人との平凡な結婚だった。


短大を卒業して、数年働き、その間に付き合った人と結婚。


相思相愛で結婚するのが理想。


だけど……理想の結婚は私の意志とは思わぬ方向に……。


父の経営している会社が不況の煽りを受けて傾き、銀行からも融資を断られて、父は昔からの友人、紫藤(しとう)のおじ様に融資を頼んだ。


私が小学生の頃まではよく遊びに行っていた紫藤家。


父が紫藤のおじ様と幼馴染だったことからよく私も連れられて。


小学生の私はつまらない大人の集まりに行きたくなかったけれど、実は子供ながらも、紫藤家の次男、高校生の隼人(はやと)さんに憧れていたから顔が見たくてついて行っていた。


高校生なんて、小学生から見たらはるか年上のお兄さん。


父に連れられて遊びに行っても、公私ともに忙しい高校生が家にいるのはまれだった。


そう思っても、父について行ったのはかすかな望みだったのを覚えている。


少しでも憧れている隼人さんを見たかったから。



******



紫藤のおじ様の融資する条件が、息子 隼人さんの嫁になることだった。


大学を卒業し、おじ様が経営する紫藤不動産のニューヨーク支社に勤務している隼人さんは30歳になるのに落ち着く気配がないらしいと。



業を煮やしたおじ様は私に白羽の矢をたてた。



父が融資を頼みに言った時、昔話になり私を思い出したらしい。







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