ルーズ・ショット ―ラスト6ヶ月の群像―

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ライブが終わってからの数日、
ミツは六帖五万五千円共益費込みのアパートに籠もった。

パソコンのモニター越しの洋二はもう何十回もライブを終えている。
三台で撮ったライブ映像は思ったよりもずっとうまく撮れていなかった。
まず、ホワイトバランスがバラバラだった。
もちろん撮影の前に合わせたのだが、
おそらくモニターの調節を怠ったことと、
次々に変わる照明の中、各自が途中でいじったのが凶と出たと思われる。

さらに、カットの指定はしたものの、
実際にミツの考えた撮影サイズではうまくカットがつながらなかった。
もっと大胆にアップやロングを撮ればよかったのだが、
皆似たり寄ったりのバストショットや
ウェストショットになってしまっている。

「ふぅーーーー」
ミツはヘッドフォンを外して天井を見上げた。
立ち上がって部屋をうろつく。

ミツの足に当たったペットボトルがころころと移動する。
腕を伸ばして左右にひねる。
キッチンへ行き、冷蔵庫を開け、冷えたコーラをラッパ飲みし、
またパソコンの前に胡坐をかく。
再びヘッドフォンをしてマウスを動かし始める。

ミツの携帯が、着信音を鳴らし始めた。
ヘッドフォンをして編集作業に夢中のミツは気づく様子もない。

バイブで少しずつ移動する携帯。
編集途中の映像の再生が一瞬途切れ、ミツはその音に気づいた。
ヘッドフォンをとり、電話に出る。

「もしもし?」
 左手で携帯を持ちながら、右手はマウスを動かしている。
「ああ、ごめん。この前のライブの映像、編集してた。」
 会話を続けながら、左右を探すミツ。
拾い上げた鉛筆でノートにカットのナンバーを書き込み、
モニターを食い入るように見つめる。

「うん。わかってる。とりあえず代返できるところは頼むよ。」
 ミツは昨夜、遊び以外で初めて徹夜をした。
早く映像を完成させて、フラワー・オブ・ライフのメンバーに見せたかった。洋二の喜ぶ顔が見たかった。

 洋二。ミツはあのライブの日、
カメラ越しに洋二自身とシンクロするような感覚を覚えた。
そして、気づいた、洋二の羽月への思い
。他のメンバーはどう思っているのだろうか。
誰かと付き合っているような話は聞かなかった。
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