本と私と魔法使い

彼は、

私の家はとてもボロいアパートだ。歩く度に床がギシギシなるし、トイレも水道管が悪いのか臭い。

三年前に両親が離婚して、私はお母さんと暮らしてる。贅沢のできる暮らしではないが、あのまま両親ともども三人家族仲良く、などできるわけではなかったからこれが正しいんだとおもう。

帰ってきた私はベッドにごろん、と転がりため息をついた。
シミのついた天井が見える。

今日は、とても長い時間を過ごしていた気がする。


「和泉春人…ね」

あいつの名前を反芻すると、夢じゃないという事がわかる。

「咲ー?帰ってるの?」

お母さんが私に声かけながら、部屋に入ってきた。

明るいオレンジブラウンの髪、長い睫毛に縁取られた優しい瞳が細められる。
お母さんは美人だ。残念なことは、私がお母さんに全く似てないことだ。
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