美しいあの人

ジェラシー

日曜だし休みだからと昼近くまで寝ていたら、既に祐治はでかけていた。
ダイニングテーブルの上に「本屋へ行きます。夕方には帰りますよ」とメモが置いてあった。
芙美子さんのことを聞いた日から、祐治は出かける時にはメモを置いてくれるようになっている。
祐治がいたら一緒に買い物にでも、と思っていたから誰とも約束もしていなかったし、
一人でいてもつまらないので、あたしも自分の買い物をしに外へ出ることにする。
四月になって随分あたたかくなった。
あたしは髪を巻き、
花柄のシフォンワンピースの上にワインレッドのレザージャケットを羽織って、
池袋駅まで出かけようとマンションを出た。
西武にでも行って化粧品を買おう。
もし祐治がジュンク堂にいるのだったら、帰りに合流すればいい。
メールを送っておこうかと、エントランスを出たところでバッグから携帯を取り出した。
マンションの前にOL風の美人が一人で立っていた。
セミロングの茶色すぎないストレートヘアに、グレーのハイネックカットソー。
その下に膝丈の黒いフレアスカート。
大きめの千鳥格子のショートコートを着ていて、カルティエのバッグを持っている。
あたしなんか今日はシャネルのチェーンバッグだ。
品の良さでは負けている。
きれいでおしゃれな人だなあと思った。誰かを待っているのだろうか。
その人をちょっと見てから、携帯のフリップを開いてメールを打ち始めようとしたところ、おしゃれな人がエントランスへ向かって来た。

< 75 / 206 >

この作品をシェア

pagetop