女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~

バカはバカでも意地がある。



 部屋に戻って、コンビニでもらってきたダンボールの一つを切り崩し、マジックで大きく書いた。

 ミッション①近づく。

 それをカーテンを閉めた窓際において、じっくりと眺めた。


 現実問題として、いざという時の貯蓄もなくなった今、この悲惨な現状を親に知られないようにするには仕事を始めなければならない。

 信用を失った派遣会社に戻る気はないし、斎に近づかなくては復讐も始められない。

 誰がしたか判らない、誰かの意思が働いてるかも定かでないって嫌がらせがしたいわけじゃあない。

 黙って後ろから近づき、階段の上で背中を押したって私の気は晴れないのだ。・・・・ううーん、若干それも魅力的だと正直思ってたけど。いや、でも。

 小川まりが、やったんだ!とあのバカ野郎に気付いてもらわなけりゃあ困るのだ。

 私は腕を組んで天井を睨む。

 ・・・やっぱり、ヤツの職場に侵入するのが一番早いか。

 4日前までの情報だとあいつはただ今百貨店で販売員なのだ。半年前に転職して、あの綺麗な外見と上手な口でファンの客を作って売り上げをのばし、既に認められて社員になり、売り場を仕切っていると知っていた。

 ・・・・・販売員・・・か。

 デパ地下の。

 仕舞うケースを捨てたので部屋の隅に押しやっていた新聞の束から、日曜版の求人広告を引っ張り出す。


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