空耳此方-ソラミミコナタ-

館の影


「この島に来て……もう四日なんだね」

翌朝の朝食、恵がしみじみと言った。
炯斗と言乃は突然のことに目をぱちくりとさせ、顔を見合わせる。

「まあ、そうなるけど……いきなりどした?」

「ん?」

恵は緩慢とした動きでテーブルに頬杖をついてどこかを見た。

「何か、濃厚だなって」

「はい?」

【確かに、非日常には変わりありませんが】

「え、そういう意味で?」

「まあ……いろいろあったなってふと思っただけ」

たいしたことではなさそうなので、ふーんと流す。
と思ったら炯斗はもう一度、恵の顔をまじまじと見た。

「な、何…?」

「恵ってさ、目、二重だったっけ?」

ううん、と恵は首を横に動かした。
言乃はよく分からずに、眉をひそめる。
しかし、当の炯斗も首をかしげている。

「だよな。でも今、片目だけ二重になってるぞ?」

「え、本当?」

慌てて手鏡でチェックする恵。
言乃もよくよく見てみると……確かに、右目だけが二重になっている。
鏡を見た恵もあ、と声をだした。

「本当だ……どうりであんまり良くないはずだよ」

【良くないって、どういうことですか?】

「あんまり体調が良くないときに二重になるの。両目になってたら熱があるんだよ」

「何だそのチェッカーみたいな体質は」

炯斗が言うと、恵は肩をすくめた。

「昔からこうなの」

「ヘンなの」

そんな他愛もない話をしていたとき、朋恵が三人のテーブルのもとへやってきた。


「お話中、ちょっといいかしら?」

そして、朋恵はその目を炯斗に向けた。



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