マスカケ線に願いを

 過去の女



 その日はユズが休日出勤で、私が休みだった。
 なかなか思い切って掃除をする機会がないユズのために、私は大掃除をかってでる。
 前にお掃除したときは、ほぼ他人だという遠慮があったけれど、今回は遠慮なく掃除ができる。

「よし」

 ジャージを着て、髪をまとめて、まずは水周りから始めることにした。


 シンクやお風呂場などの水周り、玄関とキッチンを掃除し終わり、リビングを後回しにして寝室の掃除をしているときだった。

「あっ」

 ばさっ

 奥の戸棚を開けて、荷物を取り出していたら、積み重ねてあった荷物が崩れてしまった。

「あーあ……」

 ため息をついて、それを直していると、アルバムを見つけた。
 なんとなく興味を持った私は、それを開いてみる。そこには、若いユズがいた。おそらく、大学時代だろう。

「わ、ユズ若い!」

 髪型や服装も今とは違う。今の私よりも若いユズが可愛くて、ページをめくっているとあることに気づいた。
 ユズは、どの写真でも同じ女の人と一緒にいた。

「YUZUKI×KOMACHI……」

 ツーショットで、照れたような笑みを浮かべる二人を見て気づいてしまった。きっと、この女の人は、ユズの彼女だった人だ。

 特別、嫉妬するというわけではない。
 だけど『こまち』さんと私とのあまりの印象の違いに、少し驚いた。
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