雪が降る町~追憶のletter~

2.幼馴染




季節は秋口―――


北に位置するこの町は、この時期でも既にマフラーや手袋をしている人がたくさんいて、白い息を吐きながら凛とした空気の中を歩いていく。

バス停には夏には利用していなかった人達で溢れ、通勤の時刻には決まって満員になってしまう。

ひとつき後には早くも雪が見られるだろう。


晶は白い息を上に吐くようにして空を見上げた。


まもなくバスがやってくる。
今日もそれに乗って、いつもと同じ停留所で降りて会社へ行く。


バスは在りし日の自分が待っていた場所を走っていく。
10年後の晶は、今でもそこにあの日の自分を見て心を震わさせる。



初恋を置いてきた、あの日。



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