本と私と魔法使い

渦中にいるとは知らずに

「好きよ、アルザ」

美しい金の髪をなびかせた、青い瞳の女は目の前の男に言う。
豪華なレースをあしらったドレスを着ていることから、身分の高い女だということがわかる。


「僕も君が好きだよ」

優しそうに翠の目を細めながら、アルザは微笑んだ。


ー愛しい人、大好き。

女は抱きしめようとアルザに手をのばす。次の瞬間、真っ赤に染まる世界。

「いやあぁぁぁっ」

空気を切り裂くような悲鳴。アルザの身体が血溜まりに倒れている。

血が、こんなに出てる。
死んじゃう、

美しいと褒められた、金の髪も赤く染まる。


…死なないで。
いや、どうせなら…私も殺してよ。

殺してよ。

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