触れないキス

泡沫の初恋



私達のこんな生活は、あっという間に終わりがやってきた。

3週間ほどの入院で、私は柚くんよりも先に退院することになったのだ。


怪我が良くなったのだから喜ぶべきなのに、私は素直に喜べなかった。

毎日聞いていた柚くんの声や、見ていた笑顔から離れなきゃいけないことが寂しくて仕方なかったから。


──たったの3週間。

だけど柚くんと過ごしたかけがえのない日々は、私の記憶をほぼ一色に埋め尽くしていた。



退院の前日、私はいつものように柚くんと会っていた。

いつもと変わらない話をして、いつもと変わらず笑い合う。

それなのに、どこか寂しい。

ずっと病気と闘っている柚くんに『退院できてよかったね』と言われると、更に複雑な想いで一杯になった。


夕飯の時間が近づいてくると、私の至福の時間も終わる。

こんなに寂しいのは私だけなのかな?

柚くんは今どう思っているんだろう……。

オレンジ色の沈んでいく夕日を眺めながらそんなことを考えていると、柚くんは突然こんなことを言い出した。


「瑛菜ちゃんの将来の夢って何?」

「将来の夢……?」

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