愛は満ちる月のように
(7)50センチの距離
「キャッ!」
身体が傾いたとき、誰かにぶつかった。そのおかげで美月は石段から落ちずに済んだ。
「大丈夫ですか?」
そう声をかけてきたのは、美月と同じ年ごろの青年だった。
一瞬、ほんの一瞬だけ、悠が来てくれたのかと思い、美月の心は浮き立った。
だが、そんなはずがない。美月は怒りに任せて自分の食事代を払ってきてしまった。おそらく、悠のような男性にとっては一番嫌がることだろう。
(可愛げのない女だわ……自分でもそう思うもの)
唇を噛み締めたまま立ち尽くす美月に、ぶつかった青年の連れが顔を覗き込んできた。
「へぇーっ。すっごい美人さんだねぇ。ひとり? だったら、一緒に飲もうよ。さあ」
ふいに腕を掴まれ、引っ張られる。
身体が傾いたとき、誰かにぶつかった。そのおかげで美月は石段から落ちずに済んだ。
「大丈夫ですか?」
そう声をかけてきたのは、美月と同じ年ごろの青年だった。
一瞬、ほんの一瞬だけ、悠が来てくれたのかと思い、美月の心は浮き立った。
だが、そんなはずがない。美月は怒りに任せて自分の食事代を払ってきてしまった。おそらく、悠のような男性にとっては一番嫌がることだろう。
(可愛げのない女だわ……自分でもそう思うもの)
唇を噛み締めたまま立ち尽くす美月に、ぶつかった青年の連れが顔を覗き込んできた。
「へぇーっ。すっごい美人さんだねぇ。ひとり? だったら、一緒に飲もうよ。さあ」
ふいに腕を掴まれ、引っ張られる。