蜜色トライアングル ~Winter Blue
4.擦り切れる理性
<side.冬青>
「……お兄ちゃん、私、思い出したの……」
数分後。
木葉はシーツにくるまった姿で冬青の胸にしがみ付いていた。
その瞳はどこか虚ろで、頭はまだ朦朧としているようだ。
「お兄ちゃんと私、本当の兄妹じゃなかったんだね……」
「……」
冬青は無言で木葉を見下ろした。
木葉に縋りつかれた時、冬青は反射的に身を引こうとしたが、木葉が離そうとしなかったため冬青はベッドの端に座った。
木葉の様子は普通ではない。
恐らく錯乱している。
この錯乱具合は……恐らく、薬物か何かだ。
木葉は潤んだ瞳でじっと冬青を見上げる。
その黒い瞳はまるで深淵に引きずり込むかのように、冬青の心を奪っていく。
「……ねぇ、お兄ちゃん。お兄ちゃんもどっか行っちゃうの? ……私を置いて……」
「……」
錯乱しているとわかっていても、シーツに包まっただけの姿で瞳に涙を溜めて見上げてくる木葉は壮絶に色っぽい。
自分の理性が、あとどれほど耐えられるか……。