悪魔のようなアナタ【完】

4.本気になった悪魔




玲士に連れられ席に戻った灯里はそのまま奥の会議室へと移動した。

玲士は灯里を長机の脇の椅子に座らせ、『そこにいろ』と言い置き踵を返す。

やがて数分後、玲士は二人分のノートパソコンとともに再び姿を現した。

灯里の隣の席にどかっと座りこみ、手早くノートパソコンを並べて起動する。


灯里は俯いたまま呆然と肩を震わせていた。

明日には入稿なのに、なぜこんなことになってしまったのか……。


悄然と肩を落とす灯里を、玲士が横目でじっと見つめる。


「灯里」

「水澤くん……」

「ファイルのバックアップを取ってなかったのは、お前のミスだね?」

「……っ」


灯里の目尻にじわりと涙が浮かぶ。

取締役室で必死で涙を抑えた分、今は少し涙腺が緩くなっているのかもしれない。


喉を詰まらせた灯里の横で、玲士はキーボードを叩いてネットワークにログインした。

『サーバに接続しました』と表示が出たところで顔を上げて灯里の方を向く。


「でもサーバのファイルが消えたのは、また別の問題だ」

「……え?」

「金曜の夕方。おれはお前が帰った後、サーバにデータがあったのを確認してる」


< 130 / 350 >

この作品をシェア

pagetop