彼女は予想の斜め上を行く

裕行side

アパートのある部屋の前で止まり、携帯を取り出した。

真夜中にインターホンを押すのは、気が引ける。

だから、インターホンの代わりに電話で呼び出すことにした。

電話を掛けると彼女の大好きな曲が流れる。

しばらくすると、眠そうな声が聞こえた。

『もしもし……』

「俺♪今、家の前~。あけて?」

酔っぱらったテンションのまま、話す。

『…………はぁっ!?』

おっ。覚醒?

『待ってて!』

電話からは、無機質な機械音。

目の前の部屋からは、小さな足音とチェーンロックを外す音。

「入って!」

ドアが開いたかと思うと、部屋の主である金本葵が、顔を出した。

そして、素早く俺を部屋の中に引きずり込んだ。

「どうしたの?こんな時間に」

後ろ手でドアを閉めながら、葵は俺に尋ねる。

普段バッチリメイクの顔は今はスッピンで、いつもより幼く見える。
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