雪が降る町~追憶のletter~

5.重なる温もり



(今日も残業なし。ありさも連日デートだ)


黒いコートに身を包み、いつものバス停に向かう晶は今日も寄り道せずに直帰する。

湿った道路を騒がしく音を立てて行きかう車をボーっと眺めながらバスを待つ。
今日は珍しくバス停には一人もいない。
晶はバスの時刻までの数分間、目を閉じて待っていた。


(今度からi Podとか持ってこようかな)


一人凛とした空気の中で静かに目を閉じていると、色々なことを考えてしまう。

帰宅したあとのこと、帰宅するまでの道のりの景色。

今日の仕事の小さなミスや、ありさとの他愛ない話。

真田のいつもは見られない目――




そして、お昼にあった快斗と美久―――



「お疲れ」


< 45 / 218 >

この作品をシェア

pagetop