愛は満ちる月のように

(9)壊れた絆

「ごめんなさい、バスルームを占領してしまって」


美月は髪を拭いながら寝室に足を踏み入れる。

ベッドの上に悠は転がっていた。目は閉じたままで返事がない。


(ひょっとして眠ってしまったの?)


時計を見ると、すでに深夜の一時を回っている。悠の身体に布団をかけようと近づいたとき、ふいに手首を掴まれた。


「きゃっ!」

「遅すぎる。しかも、夜中にシーツカバーまで外していくんだから……」


悠は目を開け、ベッドの上に美月を組み伏せた。


「それは……だって仕方がないでしょう? 汚れたものをそのままにはしておけないわ」


シーツの汚れに気づいた瞬間、美月はすべてをかき集めて、洗濯機に押し込んでいた。


「でも、夜中に洗ったのはまずかったかしら?」


ボストンではシェルターに保護された女性、少女たちと同じ建物に寝泊まりしている。そのほうが美月にとっても便利で安全だった。

だが、昼夜問わず働くことも多く、その分、日本の集合住宅に住むときの気遣いなどうっかりしていた。


「いや、遮音設備は相当だと聞いているから、それに、うちの洗濯機は静かだろう?」

「ええ、そうね。本当に回っているのかわからないくらい……よ」


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