空しか、見えない

第16話

【AM 6:30】

 ニューヨークは、夕方の4時半になるはずだ。
 佐千子は、早々に身支度を済ませ、テーブルの上にパソコンと英語の辞書を置いた。
 コーヒーは濃いめにして、熱いミルクを注いだ。

〈Hello Rue.〉

 書き出すだけで、指に汗が浮かんだ。

〈I was very much surprised at your mail.
 こんにちは、ルー。
 私はとても驚いています〉

 書き出しをそうするのは、もう昨夜のうちに決めてあった。純一にも、お互いに心から問いかけあったらいい、と言われたのだ。
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