女王様のため息

その後ようやく席についてラーメンにありついた。

普段から司と二人で食事をする機会は多いけれど、こうして不機嫌丸出しの司と向かい合うことには慣れてない。

無言でラーメンを食べている私たちの周囲の気温は低いに違いない。

「たまご、あげよっか?それかコーン?何でもあげるよ」

ちらりと司の目を見ながら明るく言っても、一瞬視線を私に向けただけで相変わらず黙ったままの男前。

何をしていても、黙っていても、顔がいいって得だな。

ラーメンを食べていてもちっとも安っぽく見えない。

「えっと、ビールは、運転するからだめだね。じゃ、何か一品頼もうか?」

「……いいよ、別に。それより、海ってお前の事を……。
いや、いい。さっきの写真のデータを消してくれたらそれでいいから、さっさとスマホ、貸せ」

何かを言いかけて、思い直したように口調を変えた司。

私を睨むような視線の理由がもうひとつわからない。

けれど、低く唸るような声からは、何か悩んでいるような気がする。

箸を動かす手はそのままだけど、時折私に視線を向けて……というか睨んではため息をついたり。

ここまで機嫌が悪い司を見るのは初めてで、いっそスマホを手渡そうかとも思ったけれど。

「切り札なんだからだめ」

私も負けずに言い返した。
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