空しか、見えない

第19話

 水音しか、聞こえない。
 両腕が水をかき、前へ前へと進んでいく。次のターンでやめようか。でも今日は、まだ大した距離は泳いでいない。それで、こんなに息があがっていて、どうするサチ? 自分に問いかけることで励まそうとしてみても、すぐに体力の限界がくる。
 新しい年が明け、1月、2月とあっという間に過ぎてしまった。今月のうちに、このプールで1キロの距離を、来月には2キロは泳げるようにしておきたいのだけれど、まだまるでクリアできる自信がない。
 顔を上げ、精一杯空気を吸い込んでいるはずなのに、息が上がり、うまく喉に入っていかないのだ。
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